2007年9月松尾理也氏

タイトル松尾理也氏 講演会議事録 2007/09/21 

場所: Wilson Sonsini Goodrich & Rosati

◆「シリコンバレー頭脳移民」の連載を終えて考える

松尾 理也(みちや)氏

松尾理也一九六五年兵庫県生まれ。産経新聞外信部記者。慶應大学文学部卒業。産経新聞入社後は、大阪・東京両本社社会部を経て、外信部勤務。九六年から一年半の間、米国サンフランシスコ州立大学大学院に留学。近著に『ルート66をゆく アメリカの「保守」を訪ねて』(新潮新書)がある。

◆概略

今年前半、シリコンバレーの現状をテーマに、11回にわたって「頭脳移民」という連載を行いました。そこで感じたのは、グローバル化し、フラット化する世界にあってなお、シリコンバレーという「場」の持つ求心力、魅力、魔力は健在であり、むしろ増しつつあるということ。そして、だれもが言葉ではわかっていながら、具体的にはなかなかイメージできない「グローバルな競争社会」が、一足早くシリコンバレーに出現している、ということでした。 では、日本はどうすればいいのか。なかなか答えの見つからない難問ですが、中国、インドなどアジアの台頭という現象を一つの鏡として、日本のこれからの道筋を議論できればと思っています。

-------講演会議事録--------


◆頭脳移民

シリコンバレーでは半分狂気の中で新しいものが生まれるのも本質である一方、地に足についた展開でも、とてつもなく大きな成功が得られることがある。後者に焦点をあてて連載を開始、それを包括する言葉として「頭脳移民」を使用している。

◆「移民問題」としてのシリコンバレー

シリコンバレーは、サイエンス、テクノロジーにおける「世界の中心」。「ジョイントベンチャー・シリコンバレー・ネットワーク(JVSVN)」の年次報告書によると、同地域の外国生まれの住民が地域人口の36%を占めている。科学技術系の分野に限れば、労働人口の55%までが外国生まれで占められている。その情報を発端として、不法移民などで問題視されがちな移民問題の、先端的なケースとしてシリコンバレーに着目した。

◆頭脳移民とは

頭脳移民
従来の移民
高度頭脳労働に従事 単純労働から始める
一代で成功 2世代、3世代後に成功
自国との結びつき維持 米社会に同化


これまでの主な成功は、米社会に完全に同化した、2世代目以降での成功がほとんどだった。頭脳移民では、第一世代がネイティブではないが流暢な英語を操り、高度な労働に従事しながら成功するケースがでてきている。第一世代であるため過去のように、自国とのアイデンティティが軽薄化することもない。結果、ヒトが流れ出て、また母国に戻ってくるという現象が起こっており、そのアフターマスに大きな影響があると思う。
観客
ネタ本の紹介
『フラット化する世界』
『The New Argonauts』

◆取材方法/取材者の紹介

【中国】
1.ヤフー副社長、陸奇氏のエピソード

「そうだ雨だ、雨が降っていた」と、同氏は成功の理由を話しはじめた。
学生時代は親元から大学に通う生活、決して裕福とはいえない家庭環境。同氏がある日、雨で家にとじこもっていたところ、カーネギーメロン大学の教授講演に人数あわせで参加することに。講演でしっかりと質問をする彼が、技術者探索を目的としていた教授の目にとまったことが、渡米のきっかけとなる。
エリートではなく、英才教育を受けた人間でもない。先生の教えを聞いて本を読むまじめな学生だった陸氏が、渡米後に大成功を収めた。陸氏のような方を頭脳移民と考えている。自国との結びつきを維持するのも頭脳移民の特徴としており、同氏も故郷に残した両親のことや、中国経済の台頭を理由に、いずれ中国に帰国してビジネスをすることを検討している。


【インド】
2.ザ・インダス・アントレプレナーズ(TiE)理事長 ラジ・ジャスワ氏

TiEには、グル(導師)・チェラ(弟子)システムがあり、弟子は導師を乗り越える存在であるという理念のもと、グルによるチェラへの直接投資や勧誘を禁止している。
ただ、インド本国の風土としてチェラがグルよりも豊かになることは認められにくく、TiEのシステムはシリコンバレーで培われた仕組みである。理由の特定は難しいが、シリコンバレーという地の天地人の采配があって、実現しているだと思う。


3.ロメシュ・ジュプラ

心臓外科医として大成功しており、新聞社を保有する他、エンジェル投資も実施している。TiEメンバーである一方、TiEはマハラジャ(封建的、独裁的)であると批評。
過去、在米インド人の結束が薄れ、少年非行が多かった頃、アインデンティティの再建により対処しようと、インドフェスティバルなど多くの活動を展開して成功させた。
こうした顔役、ロールモデルの存在はシリコンバレーをかたるなかで欠かせない存在だと感じる。


【台湾】
4.邱俊邦氏

台湾移民は先発組で、ハングリーさが薄れてきているかと思えば、絶えず新移民が渡米しておりコミュニティ活性化の起爆剤となっている。邱氏は台湾出身者で、渡米後に半導体企業二社を株式上場へと導いている。現在も現役のエンゼル投資家として活躍している。
台湾移民からは、物質的成功への欲求とハングリーさが伺える。複雑な台中関係を乗り越えているところも印象深く、台湾で開催されたMonte Jade Sci-Tech Assn.のカンファレンスに中国のCEOが参加。英語で進行、交流しているところも特徴的。


【南アフリカ】
5.セコイア・キャピタル Roelof Botha氏

南アフリカ出身者で、Youtube発掘者およびGoogle買収劇を演じた人物としてスター視されている。


【韓国】
6.ThinkFree社

韓国で取材をするつもりが、説明する人が白人の方だったのが印象的。


7.OnNet社

コーケイジアンは一人。他は韓国人ばかりで、同じ人種で固まる傾向があり日本と似ている。エキサイトブログを開発しており、日本でもビジネスを展開し成功している。


8.KIICA

「通産省モデル」。国主導の企業支援は、シリコンバレー流ではないとの批判もあるが、積極的な展開をしており、支援企業の株式上場事例もでてきている。


◆多彩なバックグラウンド

学者、研究者・・・陸奇
ビジネスマン/KIICA所長・・・ケビン・キム
留学の居残り組・・・Youtube
駐在からのスピンオフ組・・・テックウェル
食い詰め組・・・Chong-Moon Lee
丁稚奉公組・・・
自国でのベンチャー成功組・・・OnNet

天才である必要もなく、成功経験があっても、成功経験がなくとも事例はある。
あえて共通点をあげると、

  • 物質的成功
  • 外国生まれ
  • 母国との結びつきを大切にしている。単なる愛国心ではなく、自らの成功に役立つリソースとして


◆日本の実力は?

ネットワークの重要さが繰り返し語られており、日本人は弱いといわれがちだが、そうではない。例えば、シンガポールアトリエクラブの発起人曰く、シンガポール人の結びつきは弱く、極めて個人的とのこと。しかし、先達リーダーが存在し、そこにネットワークができあがったところにめざましい成長が成し遂げられるのではないかと思う。

◆日本は先進的?

日本人は「幸せとは何か」を長らく考えており、物質的な成功だけではないという論調がつよい。
シリコンバレーに来るだけで大成功と言われる、インドなどの国とは異なり、日本はポスト・インダストリアル・ソサエティ。自己実現というところを考えざるをえない段階に来ている。それは、ハングリー精神のなさにつながるかもしれないが、満たされない気持ちもあるのは確かで、後見ていきたいテーマの一つ。

◆シリコンバレーの野蛮さ

  • 豊かになることへの懐疑のなさ
  • 退廃のなさ、色気のなさ
  • 米国でも特殊な場所?ロサンゼルスと比べても
  • 爛熟した場所、日本


◆成功への要因(意見を総合すると…)

  • ハングリーさ
  • 大金持ち、パトロン
  • ロールモデルの存在
  • 分かりやすく、強烈な動機(日本人には少ないかも)
  • 世界を変えてもいいし、変えなくてもいい
  • 一人でやらない、日本人だけでやらない、一枚噛ませる
  • 才能


◆日本の強みとは

Googleの様になる必要もなく、自分を卑下する必要もない。国際人的な我の強さも磨きいい所を前面に押し出していくべきだと思う。

    講演の終わりに
  • 日本株式会社
  • 集団性
  • 物作り、正直さ、緻密さ


◆日本のこれから

《ご意見》

  • 日本は大企業が各産業にあり、雇用施設もしっかりしている。産業としてはトップ同士がつながっているのがマジョリティで、シリコンバレーとはネットワークのポイントが異なるのではないか。
  • シリコンバレーでは、アントレプレナーシップがあり、意気込みを感じる。お金は結果であり、利益(お金)を目的とはしていない。何か成し遂げたいというアントレプレナーシップこそが重要なのではないか。また、活動のために必要な資本が、VC、エンジェルから供給されるている。日本は、アントレプレナーシップのある人を大企業にいれずに、支援していく環境が必要である。
  • シリコンバレーはダイバーシティで実験する仕組みがある。そのようなことが必要な分野で成功している。一方日本は精密、素材関係で成功しており、集団で作りこむ分野に強いのではないか。
  • 人のモチベーションには、分かりやすい動機が必要。その明確な目標がシリコンバレーにはある。
  • シリコンバレーは、多くの人を受け入れる土壌として、原則だけで成り立っている。日本では原則だけでなく、変えられないルールが多すぎて、複雑化している。
  • 学生を大量に送るのが良い。グローバリゼーションがおくれている。


◆旧会長 松尾正人氏 ご挨拶 要旨

SVMFは1994年にシリコンバレーのwwwの動きだしたところ、そのトレンドを日本に伝えるため開始。本の執筆にまでいたる。99年からテーマ設定をして、講師を招き毎月開催。年間8~9回ペースで実現し、ようやくこの団体が認識されるようになった。SVJEN、JTPA、SVMF、JBC 4つの団体の一つで、討論・情報交換を目的としている。このたび任期を終え、9月より八木新会長に交代。


◆新会長 八木博氏 

SVMFウェブページの紹介。
http://www.svmf.org/

今後の運営目標

  • Webの定期更新
  • 会員拡大
  • 日本でのイベント実施
  • 他のネットワークとの協調・相互支援

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