2017年12月 特別講演

講演題目:

日本でイノベーションを起こすためには何をするべきか。

開催日時:2017年12月6日(水)

講師: 天野浩氏、伊佐山元氏、乙木洋平氏、松尾正人氏

「イノベーションをいかにして起こすか?」日本企業が長年向き合い続けてきた問いだと思います。今回のSVIF特別企画では、2014年ノーベル物理学賞を受賞された名古屋大学教授天野浩氏、シリコン・バレーで日系大企業のイノベーション支援を行うWiL社CEO伊佐山氏、GaN(窒化ガリウム)基板などの化合物半導体の製造・販売を行う(株)サイオクス事業開発部部長乙木洋平氏、SVIFアドバイザー兼九州大学カリフォルニアオフィス代表松尾正人氏の4名をお招きし、各々の視点から今最も必要とされている、「日本でイノベーションを起こすためには何をするべきか」というテーマに関して発表していただきました。

最初に松尾氏より、「イノベーションとは何か、日本のイノベーションの現状、日本でなぜ今イノベーションが必要か」をお話いただき、イノベーションとは技術革新ではなく、異なる2つの物事を結びつけ新しい価値を生み社会にインパクトを与える新結合だとの定義と、日本においてイノベーションが生まれない原因について発表していただきました。

その次に、伊佐山氏より「日本でイノベーションを起こすにはどうすればよいか」をテーマに発表いただき、日本の大企業をシリコン・バレーに誘致しイノベーションを創り出す仕組みと、イノベーターである為のマインドセットを発表していただきました。

次に、乙木氏より青色LEDの開発に必要なGaN (窒化ガリウム)の技術的な説明と青色LEDが生まれるまでの秘話などをお伺いし、天野氏からは全体の議論の総括とGaNデバイスを用いた新しいエネルギー供給システム Internet of Energyの取り組みをお伺いしました。

終始、参加者とプレゼンターとの間で日本のイノベーションについて熱い議論がされ、青色LEDの技術など日本の誇る高い技術をいかにしてイノベーションに繋げていくかという議論がされました。

講師略歴:

天野浩氏略歴(Wikipediaより)

電子工学者。工学博士(名古屋大学)。専門は、半導体工学。名古屋大学教授、同大学大学院工学研究科教授、同大学未来エレクトロニクス集積研究センター長、同大学赤﨑記念研究センター長、名城大学LED共同研究センター運営委員。赤崎勇氏と共に、世界初の青色LEDに必要な高品質結晶創製技術の発明に成功した。2014年、この業績により、赤崎勇、中村修二両氏と共にノーベル物理学賞を受賞。

LEDは電気を通すことで効率よく発光する半導体素子。赤色、緑色の高輝度LEDは早い段階で作られていたが、波長がより短い青色LEDは、実用に耐える技術の開発は「20世紀中は困難」といわれていた。赤崎氏は松下電器産業(現パナソニック)に在籍していた昭和48(1973)年、青色LEDの開発に必要なGaN (窒化ガリウム)の研究を始めた。名古屋大教授だった60年にサファイアを基板に使う手法を考案し、困難とされていた高品質の結晶を得ることに成功。平成元年にGaNの半導体の要素技術であるPN接合にも成功し、青色LEDの技術基盤を確立した。天野氏は名古屋大で赤崎氏に師事し、高品質結晶を作製する実験に成功した。

伊佐山元氏の略歴

1995年にウェブデザインとコンサルを行うArch Pacificをスタンフォードの学生と創業。1997年東京大学法学部卒業後、日本興業銀行に入行。法人営業、及び市場業務に従事。2001年よりスタンフォード大学ビジネススクールに留学。2003年より、米大手ベンチャーキャピタルであるDCMにてパートナーとして、インターネットメディア、モバイル、コンシューマーサービス分野への投資を担当。シリコンバレーと日本を中心に、ベンチャー企業の発掘と育成に注力。日本にベンチャー精神を普及させるため、日経産業新聞、日経電子版、東洋経済オンライン等メディアへも多数寄稿している他、経済産業省や文部科学省をはじめ、多くの政府委員や有識者会議のメンバーとしてもベンチャー振興の提言を続けている。?2013年に日本の大企業からの出資を得てWiL社を創設。WiL社はシリコンバレーを本社にして、東京にも拠点を持ち、大企業のイノベーションを支援する会社である。

松尾正人氏の略歴

1969年に研究者としてNJのベル研究所に招聘されたことで來米し、その後日本ゼオン社のNY駐在員として22年間新事業開発に従事した。その後日本ゼオンの本社に戻り、事業企画開発部長、取締役研究開発本部長を歴任、1999年よりシリコンバレーにて情報収集活動に従事。2004年に九州大学カリフォルニアオフィスを創設、学生の「英語+起業家精神教育」を開始、これまでに1000人を超す学生のイノベーションとグローバリゼーション教育を継続している。

乙木洋平氏の略歴

1980年 九州大学工学部電子工学科卒 日立電線入

1983年 化合物半導体の研究へ転属。以後GaAs,GaNの結晶成長・評価に関す

る研究開発に従事。

1994年 九州大学より学位授与(GaAsの半絶縁性に関する研究)

2008~2011年: シリコンバレー駐在

2010年に米国の学会CS-MANTECHにてconference-chair(アジア人初)

2014年4月:所属する日立金属化合物半導体事業部が住友化学に譲渡され、子会社“サイオクス”に。現職 (株)サイオクス 事業開拓部 担当部長(GaAs、GaN材料製品の評価、製品開発、ビジネス開拓) 大学での講義、学会での招待講演など多数。