2018年8月 特別企画
SVIF特別企画「おクジラさま〜ふたつの正義物語」映画鑑賞会
今回のSVIF特別企画では、あるドキュメンタリー映画を題材に「自分と相容れない他者との共存は果たして可能なのか」という問題を考えました。
映画は和歌山県太地町という小さな漁師町を舞台に、クジラ・イルカ漁を巡って衝突する地元の漁師と海外の活動家の様子を通して「なぜ私たちは分かり合えないのか」を問いかけます。捕鯨の賛否を問うのではなく、日本の捕鯨政策を擁護する立ち位置でもありません。映画は観客それぞれが自分で答えを探し、見つけるように構成されています。
この作品は、2016年秋にアジア最大の映画祭である韓国の釜山国際映画祭のコンペティション部門で正式招待されたのをスタートに、日本では2017年秋に全国で劇場公開されました。しかし、欧米の主な映画祭ではテーマ性、そしてアカデミー賞受賞作品である「The Cove」に対する配慮からなかなか受け入れられなかったようです。しかし、他方では限定的ながらも作品を観た欧米の観客から好意的な反応が得られた一面もあったそうです。
この映画が問いかけるのは、捕鯨問題の是非ではなく、クジラ・イルカ漁を巡る人間の生き様であり、グローバルv.s.ローカルという価値観の衝突です。考え方や価値観が相容れず、平行線でしかないもの同士が共存することは果たして可能なのか。
日本の特殊な習慣や文化が価値の高いものと思っていてもそれを外国人にどうやってわからせたらよいのかについて悩んでおられる方も多いのではないでしょうか。 アメリカに住む私たちにとって他人事とは言えないものがあるように思います。
当日は、動物愛護の枠を超えた、私たちの社会や生活、さらにはビジネスにも通じる普遍の一課題としてこの問題について皆様と考え、議論する機会を持ちました。
- 佐々木監督からのメッセージ -
この度は「おクジラさま」とSVIFのみなさまに見て頂く機会を頂き、ありがとうございます。映画は、和歌山県太地町という小さな漁師町で起きた国際紛争を通して、グローバルとローカルな価値観の衝突を描いています。宗教、人種、国籍だけでなく、シンプルに考え方の違う人同士が、どうすれば分かり合えるのか、トランプ政権下で多くの問題が両極化し、罵倒雑言の欧州が続いている今、この映画がイルカ・クジラ問題を越えて、新しい視点で世界を見据えるきっかけになることを願っています。
【開催日時】 2018年8月3日(金)19:00pm~
【開催場所】
Wilson Sonsini Goodrich & Rosati
650 Page Mill Rd, Palo Alto, CA 94304
【例会次第】
18:45 開場、受付開始
19:00 - 19:15 SVIFからのご挨拶、ゲストのご紹介
19:15 - 21:00 映画全編上映
21:00 - 22:00 佐々木監督からのご挨拶とお話、質疑応答、ネットワーキング
※当日は軽食とお飲み物をご用意いたします。
【ゲスト】
ドキュメンタリー映画監督・プロヂューサー
佐々木 芽生(ささき・めぐみ)氏
- 略歴 -
北海道札幌市生まれ。1987年よりニューヨーク在住。フリーのジャーナリストを経て1992年NHKアメリカ総局勤務。『おはよう日本』にてニューヨーク経済情報キャスター、世界各国から身近な話題を伝える『ワールド・ナウ』NY担当レポーター。その後独立して、NHKスペシャル、クローズアップ現代、TBS報道特集など、テレビの報道番組の取材、制作に携わる。
2008年、ささやかな収入で世界屈指のアートコレクションを築いたNYの公務員夫妻を描く、初の監督作品『ハーブ & ドロシー 』を完成。世界30を越える映画祭に正式招待され、米シルバードックス、ハンプトンズ国際映画祭などで、最優秀ドキュメンタリー賞、観客賞など多数受賞。NY、東京の劇場でロング・ランを記録した他、全米60都市、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどで公開される。2013年、続編にあたる『ハーブ&ドロシー2?ふたりからの贈りもの』完成、発表。第一作目とともに、現在も世界各国の劇場、美術館、アートフェアで上映が続いている。
2014年NHK WORLD にて、日本の美術を紹介する英語番組 ART TIME-TRAVELERナビゲーター。2016年秋、第3作目にあたる長編ドキュメンタリー映画「おクジラさま?ふたつの正義の物語」完成。本作は2015年TOKYO DOCSにて最優秀企画賞受賞、2016年釜山国際映画祭コンペティション部門に正式招待された他、ロードアイランド国際映画祭、トロント・リールアジアン国際映画祭で最優秀作品賞受賞。日本では、2017年9月9日から全国で劇場公開され、2018年夏から全米で劇場公開予定。集英社より出版された初めての書下ろしノンフィクション作品「おクジラさま」で、2018年科学ジャーナリスト賞受賞。