2020年6月 松尾 正人氏・石井 正純氏・菅谷 常三郎氏

講演題目:日本を強くするにはどうしたらよいか

皆さんはどうお考えでしょうか。今の日本を外から見ると世界の中でいくつかの面で大きく遅れているように見えませんか。日本の素晴らしいところが数多くあることは今や世界でもよく知られている通り、我々日本人が最も誇りにしているところです。しかし我々がこれまで頼りにしてきたビジネス、先端技術、教育のそれぞれの面で、この30年来何か世界の早い動きについて行っていないように思いませんか。それは国の生み出した財とサービスの付加価値の総額である国民総生産、GDP、の動きをみても分かります。日本のGDPは、1960年来の高度成長の後、1990年付近から過去30年間約500兆円位でほとんど増加しておらず, 急成長している世界の先進諸国との明らかな違いが明白になっています。世界のトップ10の企業リストの内8社が日本企業だった時代も過去にはありましたね。日本國はどうしたのでしょうか。何が間違っているのでしょうか。どうしたら日本をまた元気な高度成長の国にすることができるのでしょうか。

今回は米国NY州とCA州に合計45年在住して、研究者及び駐在員として新規事業開発と日米のビジネスに深く関わり、さらに日本の大学生や高校生のシリコンバレー研修を主宰し、外からずっと日本を見つめてこられた松尾正人さんにモデレーターと意見発信をお願いしました。加えて、シリコンバレーで長い間新事業開発とその育成に専念してこられた石井正純さんと菅谷常三郎さんにそれぞれの専門分野からのご意見を伺いました。

この課題の解決策としてはいろいろな意見があるでしょうが、松尾さんは40年にわたる研究と新規事業開発の経験及び日本の若者のシリコンバレー研修を主宰してきた経験から、結論として、日本を強くするには以下の3点に注力する事が必要であると考えるに至りました。

  1. 大企業が従来のビジネスから脱却して新しいイノベーションを起こすこと

  2. 新規企業を数多く起こして大きなビジネスに育てること

  3. それらを可能にする日本の知的若者のマインドセットを積極的なものに変え、グローバルに活躍できる、イノベーションを起こせる人材を養成すること

今回のSVI例会では、上記3点に関してそれぞれの専門家にお考えを話して頂きました。

  1. 「大企業のイノベーション」に関しては、AZCA社長の石井正純さんにお話しいただきます。石井さんはシリコンバレーでは知らない人はないくらい著名なコンサルタントです。AZCAを通して長い間日本企業を中心にして日米企業の新規事業展開およびグローバル化の戦略構築および実施の支援を行なってこられました。大企業の活性化に関して、独自の見解を示して頂きました。

  2. 「新規企業の開発と育成」に関しては、長い間VCとして新規事業育成に注力してこられたみやこキャピタルの菅谷常三郎さんにお話を伺います。菅谷さんは最近特に日本国外の大学や研究機関発のユニークなスタートアップへのVC投資と支援を行っておられます。今日本のスタートアップの問題は何なのか、何をどう変えれば数多くのユニコーンが日本から生まれるようになるのか、などについて独自の見解を伺いました。

  3. そして日本の知的若者の育成に関しては、九州大学CA Officeの松尾正人さんが今の日本の若者の課題は何なのか、どうしたらグローバル的に積極的に活躍でき、イノベーションを起こせる人材を養成できるのかについて独自の見解を述べて頂きました。

【講師】

石井 正純氏、AZCA, Inc. 社長

<略歴>

日本IBM、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て1985年シリコンバレーにAZCA, Inc.(“アズカ”)を設立。日米企業の新規事業開拓支援およびグローバル人材の育成を行っている。AZCAを主宰する一方、ベンチャーキャピタリストとしても活動。現在は特に日本企業の新規事業創出のためのコーポレート・ベンチャリング支援に力を入れている。

東洋大学学術アドバイザー、中部大学工学部客員教授。

菅谷 常三郎氏、みやこキャピタル 代表取締役

<略歴>

2015年よりみやこキャピタルの代表取締役(現任)。1999年以降、米国シリコンバレーで6つのVCファンドの設立・運営に携わり、ゼネラル・パートナーを務めた。2003年よりジャフコアメリカのPresident & CEO、ジャフコの執行役員。2013年に、全米トップ100VCキャピタリストにランクイン (The Top 100 Venture Partners on the planet 2013, AlwaysOn)。

ジャフコ入社前モトローラ在職時は、技術部門のマネージャを歴任(デバイス設計、システム制御R&D、移動体通信R&D等)。

防衛大学校理工学部 卒業、九州大学カリフォルニア・フェロー 、山形大学客員教授

松尾 正人氏、九州大学カリフォルニアオフィス, Inc. 社長

<略歴>

九州大学工学部大学院卒業後、日本ゼオン(株)入社、中央研究所にて世界に通じる発見を2件達成。博士号取得とほぼ同時に米国ベル・テレフォン研究所からの招聘で1969年に渡米し2年間研究。1971年から日本ゼオン・アメリカ社(ニューヨーク)にて新事業開発に携わる。1993年から1999年まで日本ゼオン東京本社で事業企画部長、取締役研究開発本部長を歴任後、再び渡米。サンノゼにて日本ゼオンCAオフィスを創設。並行して2002年から九州大学諮問委員を委嘱され、2004年に九州大学CAオフィスを開設。2006年から九大生のシリコンバレー研修を開始。

ボランティア活動:日本の大学間連絡協議会(JUMBA)元会長、SVIF元会長・現アドバイザー、箱根財団元理事長

20200612_松尾氏_イントロダクション.pdf
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